善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS 三匹の童 (『下天の華』信長×ほたる)

※『善徳女王』とは関係のない記事です。


『下天の華』(信長や家康と恋愛するという、笑っちゃいけないんですがなんとなく笑っちゃうゲーム。←コラw)のSSです。
とりあえず信長だけは全部クリア出来たぞ記念に。

それにしても、これからキス(かそれ以上のことを)するぞって時に、信長がまだ同じ部屋の中にいる蘭丸に向かって「蘭、さっさと目をつぶれ」と言ったのにはウケました。つぶってればいいのか!?そういう問題なのか!?
意外とこういう殿キャラは初めてだったので、百済のウィジャ王はこういうキャラにしようと思いました(えっ)




* *


 中秋の修練所に響く、鋭い音色。

「はっ!」

 それを発しているのは、黒髪を靡かせる蘭丸と、赤みがかった髪を翻す青年だった。何を隠そう、この青年は蘭丸の心酔する主織田信長の正室桔梗姫に他ならないのだが、そうとは知らない蘭丸は、久方ぶりに姿を見せた七介相手にもう長いこと木刀を振っている。
 七介もとい、桔梗姫もといのほたるも、鈍っていた身体にキレを取り戻そうと、蘭丸の一撃一撃を真摯に受け止め、反撃を返す。修練所の面々は、息もつかせぬ二人の勝負にすっかり目を奪われていた。

「なんだ、あの騒ぎは」

 そこへ通りかかった信長は、修練所であるはずの場所から気合ではなく歓声ばかりが聞こえることに機嫌を下降させると、彼らしい遠慮のなさで輪に入った。

「貴様ら、何をしている」
「あっ、信長様……!」

 そうしてあたふたと道を空ける武者どものおかげで、いつも通りの目付きの悪さで喧騒の中心を睨みつけることの出来た信長の眼に入ったのは、蘭丸と、見覚えのない若武者だった。見れば、あの蘭丸と互角に撃ち合っているではないか。しかも、あの軽やかな身のこなし。

「ほう……」

 信長の顔に悪童と変わらない笑みが浮かぶまで、ほとんど時間はかからなかった。

「おい」
「はっ、はい!」

 背後で蘭丸よりは控え目に「信長様、間もなく謁見の刻限でございます」とすがる小姓たちにびろうどのマントを放るや、信長は差し出させた木刀片手にずかずか修練所に踏み込んだ。今や辺りは静まり返り、誰もが信長を見ていたが、蘭丸と七介だけはまだお互いに集中している。ちょうど、二人は鍔迫り合いを繰り広げていた。ところが、

「蘭!!」

 の一喝が落ちるや、蘭丸はいち速く木刀を引き、七介から離れた。七介も慌てて振り返る。

「っ……」
「信長様!」
「蘭。誰だ、こやつは」

 何故だかやたらと目をそらす七介を顎で指すと、信長はヒュン、とその場で木刀を一振りした。まるで使い馴れない得物に身体を馴染ませるように。

「この者は、七介と申しまして、常々修練を共にしております」
「ほう。見覚えのない顔だが、どこの者だ」

 今度の質問は、明らかに七介自身に向けられている。蘭丸からも答えるように頷いて寄越されて、七介は一礼した。

「明智光秀様にお仕えしております」
「光秀か。やつはまた余に隠して腕利きを雇ったようだな」

 また、の部分を強調する信長に、七介――いや、ほたるは落ち着かない。
 ――まさか、変化を見破られたのか。
 信長はほたるが姫や小鳥などあらゆるものに化けることは知っていたものの、まだ若武者姿のほたるは知らないはずだった。だからこそ、ほたるもこの姿で天主を抜け出し、蘭丸と修練を重ねている。
 なお、桔梗姫の時にはどこかしら距離がある蘭丸とも、七介としてはすっかり親しくなり、今では友人と呼べなくもない関係を築いている。元々さして年の変わらぬ武人同士、通じ合う部分も多い。蘭丸は男の七介相手でも全く下卑たところがないことも幸いして、日によっては信長よりも蘭丸と交わした言葉の方が多い時すらあった。

「七介」
「……はい」
「苦しゅうない。余と一手つかまつれ」
「!」

 驚愕に瞠目する七介に頓着せず、信長はさっさと木刀を構えた。そもそも気の長くない夫であり、ほたるもそれは重々心得ていたが、しかし、ほたるはそれだけは出来なかった。例え戯れや稽古であっても、信長に得物を向けることだけは。何故なら。

(まだ……私の手には、信長様を刺した時の感触がはっきり残っている)

 あれは信長の策略であり、ほたるに己を刺させたのも信長だ。そう頭では理解しているのだが、どうしても気持ちが整理できない。
 ――信長様にだけは、二度と得物を向けたくない。

「七介? どうしました」

 いつまでも七介が木刀を下ろしたまま動かないのを見て、蘭丸が訝しげに問いかける。一方の信長は、七介をじっと睨めすえたまま暫く黙っていたが、ややあってから、ふいに七介に向かって木刀を振り下ろした。

「七介!」

 それでも動かない七介に蘭丸が目を見張った瞬間、信長の木刀は七介の肩にぎりぎり触れない辺りで止まった。その間、やはり七介は俯いたまま何も言わない。
 フン、と常の調子で信長は鼻を鳴らした。

「余と刃を交えるのは嫌か」
「……お許しください」

 苦渋の滲む声で頭を垂れる七介に、蘭丸の目が大きく開く。こんな七介の姿をかつて蘭丸は見たことがない。
 果たして信長からどのような怒りが吹き出すことかと周囲も冷や汗を流したが、当の信長はと言えば、「ならば是非もなし」と意外にもあっさり木刀を引き、踵を返した。が、去り際、

「七介」
「はい」
「後ほど天主へ来い」
「!」

 さらりと宝禄火矢を落としていったものだから、信長が去り導火線も消え失せると、修練所は七介の行く末を案じる大爆発が起こった。



 ――七介として待つか、桔梗姫として待つか。
 信長からとんでもない二択を迫られたほたるは、赤々と沈み行く夕映えに照らされた自室で困り果てていた。
 今は桔梗姫の姿でいるが、信長がもうじき天主に戻るということは通知されている。その時桔梗姫の姿がなければ一騒動起きるだろうし、七介の姿がなければ信長が機嫌を損ねるだろう。すぐにも二ノ丸邸に押しかけ、七介を出せと光秀に迫るかもしれない。ただでさえ妹を信長に取り入らせたなどという悪評を背負わせてしまっている光秀に、そのような迷惑はかけられない。

(……私が信長様にお話ししていなかったのがいけなかったのだ)

 やはり桔梗姫の姿で信長を出迎えて、己が七介であると告白しよう。きっと信長の怒りを買ってしまうだろうが、今さらと憤激されても文句は言えない。

 小姓の告げた通り、信長は夕陽が闇に融かされる前には帰還し、常のようにその御座所で夕餉を食した。信長の膳は小姓が調え、毒味役もいるから、食事の間はほたると言えども入室はしない。しても信長は怒らないのかもしれなかったが、ほたる自身の判断でそうしている。
 だから、信長がほたるのいる奥に来るのは、もうすっかり夜の帳が下ろされてからのことだ。
 その日はほたるがいつも信長を待つ寝所に入るや、信長は褥を無視してほたるの膝に頭をのせて寝転んだ。ほたるを見上げる眼は、約束をすっぽかされたはずなのに憤る気配もない。

「信長様」
「今日はおかしな男に会ったわ」

 しかも言い出そうとした矢先に信長が話を始めたものだから、忍びとして表情を少なくする癖のあるほたるは瞬きを僅かに増やすしかなかった。

「七介と言ってな。蘭とは散々火花を散らしておきながら、余を見るなり木刀の持ち方すら忘れたような有り様よ」
「信長様――」
「試しに天主へ来いと言ったが、そのような者はついぞ来なかったという」

 悪戯っぽい笑みには、どのような意図が秘められているのか――。
 ほたるは少々焦り始めた。

「信長様、お聞きください。その七介は――」
「ハハッ。ほたる、まさか余に七介の膝で寝ろとでも言うつもりか?」

 さすがに妻の狼狽を無視出来なくなったのか、つとほたるの頬を撫でるや、信長は豪気に笑った。

「えっ?」
「何を驚く。七介はお前の変化であろう」
「……ご存知だったのですか!?」
「いや」

 今日顔を見るまでは知らなかった、と信長はあっさり白状した。それに、顔を見てもすぐにほたるだとわかったわけでもないという。
 けれども、七介と目が合った瞬間、その瞳の揺らめきで間もなくほたるだと気がついたらしい。その後は、せっかくだからとほたるならぬ七介の腕前を試しにかかったのだが、七介は泣き出しそうな瞳であくまで手合わせを拒絶した……。

「お前は愛い女だな」

 その時のことを語りながら身を起こしていた信長は、戸惑うほたるの手首を捕らえて抱き寄せると、口を吸った。

「信長様……っ」
「稽古であれ、余に得物を向けるのはそれほどつらいかと、哀れに思うたわ」

 信長のねぎらいといたわりは、唇を伝ってほたるの身体を隈無く駆け巡る。その優しさが切なくて、ほたるは思わず俯いた。

「……申し訳ありません。ご期待に沿うことが出来ず……」
「ほたる。余の話を聞いておったか?」
「はい、聞いておりました」
「ならば、なぜ謝る」

 信長はほたるの卑下を見過ごさない。忍びとして、自らを卑下することが性となっているほたるに対して、言葉にはしないけれども、「自信を持て」とその眼差しで語りかけてくる。
 そして、それでもなおほたるが俯いてしまうこのような時には、信長は有無を言わさずほたるをその腕に捕らえて返事を迫った。

「ほたる」

 その声は早くも苛立ちを覗かせていて、放っておけばさらに困った事態になることは目に見えている。致し方なく、ほたるは不器用に思うところを語った。

「信長様の稽古の相手も出来ぬのは、忍びとしての未熟さゆえです」
「では、この信長の妻としてはどうだ」
「妻として……?」

 思わず顔を上げたほたるの顎を掴んで視線を合わせるや、信長はさらに畳み掛けた。

「お前が余に傷をつけたくないと思うのは、余を愛しく思うゆえではないのか?」
「のっ……」

 信長様、と声も出せないほたるの頬に、こめかみに、額に、まるで結界でも張るかのように口づけを残しながら、照れるでもなく信長は続ける。

「見よ。お前の肌は、どこもかしこも余が恋しいと叫んでいる」
「そっ……そんなはずはありません!」

 相変わらず真顔でとんでもないことを言い出す夫に、ほたるは半ば本気で反論した。――ところが。

「ほう? この口は、余が恋しくないと申すか」
「っ……」

 そこで何やら信長の眼が爛々と赤黒い光を放ち始めたものだから、ほたるは反射的に距離を取ろうとした。けれどもほたるが動き出す前に、信長はまるでそれを予期していたかのように素早くほたるの両の手首を一つにまとめて褥に押しつけ、空いた手を袷に突っ込んで忍法帖を奪い取ったではないか。

「蘭!!」

 しかもそれを、突然の大音声に慌てて次の間に入室し、状況を認識するや真っ赤になった蘭丸に放り投げるのだから、たまらない。

「ほたるの宝だ。大切に一晩預れ」
「はっ……?」

 どうやら、今夜の信長にはほたるが逃げることを許すつもりはないらしい。

「信長様っ! お返しください!」

 そうなると、狼狽して抗っても後の祭り。

「さっさと下がれ、蘭」
「っ……は、はい!」

 歯切れの悪い返事の割には瞬く間に廊下の彼方に蘭丸が下がったのを確認してから、信長はようやくほたるを拘束する手を緩めた。いくらほたるが腕の立つ忍びであるとはいえ、単純な身体能力で言えば信長が上だ。忍法帖がない今、やたらに力業をしてはほたるの柔な肢体に傷がついてしまう。
 しかし、そのような気遣いとは別に、信長は今夜、悪童が小鳥を乱暴に籠に押し込む時のように、ほたるを困らせ……いや、心底虐めてやりたかった。
 というのも、蘭丸と「七介」が親しげだったからだ。いや、それどころか蘭丸の話では、七介は控え目だが快活に笑う男だという。
 別にほたるが七介になるのを悪いとは言わないし、もし七介ではなく女に化けていたなら信長も口説いて楽しんだだろうが、同時に、そういう一事が時として信長には酷く不愉快なこともあった。例えば、己の前では「いけません」だの「申し訳ありません」だのと俯いたり目を逸らしたりすることの多いほたるが、蘭丸の目は真っ直ぐ見返したまま逸らさない上に、微笑みを返しているのを目にした時などは。

「信長様、お待ちください……っ」
「またそれか」

 よって、信長は、
 ――今宵は両の手では足りないほどの睦言を引き出すまで、ほたるを虐め抜いてやるか。
 ……などと埒もないことを考えながら、変化という逃げ場を失った愛い奥方に悪童そのものの笑みを向けたのだった。






***

蘭丸EDで、わざわざ七介に化けての「隙あり!」が中々の衝撃だったので。
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  1. 2013.09.03(火) _21:00:00
  2. 下天の華
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