善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SSS 明時

更新が滞りがちですみません!ちょっとバタバタしておりまして、今週もお返事ともども遅くなりがちになりそうです(汗)(体調はかなり整ってきておりますので、ご心配なくー(*´∀`*) お気遣いくださった方々、ありがとうございますv)(didi様、お返事は今から致しますー!!←返信不要が通じない緋翠ですのでw)

続きは、『SS 同床異夢』のオマケで、例の夜の翌朝の二人です。短過ぎるのですが(汗)、お楽しみ頂ければなーと思いますv


* *


 閉ざされた室に、ふわりと風が巻き起こる。ピダムが出ていった――と、それでわかった。
 独り残されたトンマンは、暫く小娘のように啜り泣いた後、郎徒だった頃にそうしたように、手の甲で、掌で、乱暴に瞼を擦って気だるい身体に鞭を打った。ピダムを引き留めたり、後を追ったりしなかったのは、そうして良いのかと躊躇う思いからだけでなく、身体がとても俊敏に動けるような状態ではなかったからだ。

「……なんて酷い奴だ」

 硬く、ひんやりとした床で一夜を過ごしたせいで、身体中が軋む。同じことをするなら、もっと気遣いがあれば良いのに、ただ力押ししか知らないのか、あるいはどこで寝ようが構わないくらい頑丈なのか、ピダムは寝床には全く配慮がなかった。
 そして、そんな酷い扱いを受けたことを思う度に、涙が溢れ落ちた。いくら女を棄てて玉座にあると言っても、身体は生身の女だ。乱暴に扱われれば、それだけ痛み、苦しむ。
 おまけに、ピダムがそうとわかってやったことならただ憎めたが、昨夜の酔いに任せた錯乱振りを見れば、どうせわかっていないに違いないと確信出来た。それに、ピダムに逃げられることには慣れていた。……それがまた、小憎らしくて、切なくて、睫が滲む。
 そして、もう一つ。

(まだ、ピダムが一緒にいるみたいだ……)

 初めて知った契りの深さと恍惚の余韻は、なかなかトンマンを解放してくれなかった。
 今、トンマンに出来ることは、ピダムが後先を考えずに千々に乱していったものを、掻き集めることだ。身体に力が入らず、涙ばかりが零れるのは、何か一つのことが原因だとは到底言えないのだから。
 ただ一つ確かなことは、トンマンがこの場所を出るには、ピダムとは比べ物にならないほど時を要すると言うことだ。身も心も酷く掻き乱されたままでは、ここを出て行くことは出来ないのだから。

(それでも……一刻でも早く、戻らなければ……)

 すぐにも朝が来る。暁には女王は目覚めなければならない。

「…………なんて……酷い奴だ……」

 悪足掻きのように腫れぼったい瞼をもう一度擦って、トンマンは拳を握りしめた。





 曙を突っ切るように秘路を出たピダムは、駆け込んだ司量部の一室で椅子に崩れ落ちた。装束も髪も、見る者が見ればそれとわかるくらい乱れていたが、構っていられなかった。

『忘れろ。昨夜のことは……忘れろ』

 座り込むと、濃密な情交の余韻と、後朝の空々しさが相俟って、目眩がした。身繕いを済ませて出仕の支度をせねばならないと頭ではわかっているのに、身体は未だに一夜の夢に揺蕩っているらしく、いつになく鈍い。瞼を閉ざせば、すぐにでも瞳に焼き付けた恋しい姿が蘇った。
 けれども、雪のように白い頬が朱に染まるさまは、間もなく啜り泣く哀れな後ろ姿へと変じてしまう。

(……どう罰せられようが構わないと、思っていたのに……)

 これが最後でもいい。処刑されようが構わない。生身の彼女に触れて、この腕に抱けるなら、あとはどうなったって構うものか――。
 そう思って、夢のような一夜を送った。隠し部屋に贈り物が置かれていたように、確かに彼女の心の中には彼の居場所があった。互いを抱きしめ合い、甘く切ない声で、何度も名を呼んでくれた。それがどんなに幸せだったか、嬉しかったか、もっと伝えたくて、何度でも抱きしめた。
 だと言うのに、夜が明けると、夢から醒めてしまったかのように、トンマンは彼に背を向けた。

『どうして……こんな、ことを……』

 ――何を間違えてしまったのだろう? あんな風に傷つけて泣かせるようなことを、いつしてしまったのだろう?
 考えても考えても、わからなかった。確かに最初は驚き抵抗されたけれど、彼の意を察してくれたのか、そう長くは抗わなかったし、その後は躊躇いはあっても反抗はなかったように記憶している。むしろ、拍子抜けするくらい大人しかったと言っていい。意に染まぬことであったかもしれないのに、受け入れられて、彼の方が驚いたくらいだ。
 ……やはり、いくら考えても、明時になって突然泣かれる理由は、わからない。

(……あんな風に、泣かせたかったんじゃない)

 喜ばせたかったし、微笑んで欲しかった。自分からは甘えられない彼女だからこそ、彼が踏み込むことで、いつかのように笑って欲しかった。「しょうがない奴だな」と……「子供のようだ」と、微笑む姿が見たかった。そして、確かに昨夜は、そうなると確信出来た。
 ――わからない。傍にいればいるほど、彼女の心は見えなくなる。
 トンマンの気持ちは、いつも彼の掌をすり抜けていく。それでいて、彼の懐には確かにその心を一欠片、落としていくのだ。
 ……悔しいけれども、どうしても、ピダムはその欠片を手放したくなかった。例えその欠片が氷のように冷たくても、焔のように熱くても、構わない。トンマンが、彼の贈り物をひそやかに眺めていたように、彼もまた、彼女が残していった欠片を、いつまでも見つめていたかった。




****

ここから、『SS 巫山の夢』に続きます。
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  1. 2012.03.11(日) _23:59:33
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