善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by 緋翠

今日の天体ショーは、管理人の住む地域では見られませんでしたが、西日本にお住まいの方(りばさんとかあきさんとかv←いきなりお名前をお出ししてすみません…!)はご覧になれましたか? 特に、せっかく眼鏡を買ったのに、日食の時は曇ってた方がご覧になれていますように(*´∇`*)

続きは、遅れまくりまして、申し訳ありません…!(汗)なリレー小説です。


* *


 天と地の境が朧に滲む、永遠に連なる砂景色――。果てのない景色は、ゆらゆらと重なっては、離れていく。それが、砂漠のもたらすものか、それとも彼自身の目眩ゆえか、チルスクにはわからなかった。ただ、往路では迷いながら進んだ砂の上を、今の彼は、迷いなく歩いている。

『夜になって星が見えるようになるとさ、こっちが北だーってわかるの。小さい頃から、星の位置が頭に入ってるみたい。だから、おじさん安心してついて来て!』

 ――夜の間に、再びあの赤子は十五年と言う年月に紛れ、埋もれてしまったのか。
 身体の奥底に諦観を滲ませながらも、充血した眼を凝らして霞む視界に影を探すのは、まだ終わっていないと思えるからだ。まだ、まだ終われない。諦めきれない。国仙がいた十五年前とは違う――盛んに彼を駆り立てる本能と、一縷の望みに縋って、チルスクは岩のような身体を引き摺った。



「おい! 動け、うーごーけーよー!!!」

 その頃、ピダムは何故だか座り込んでしまった駱駝を相手に四苦八苦していた。何せ、荷は全てこの駱駝に積んであるのだ。駱駝がいなければ、旅の間の路銀も儘ならない。
 しかし、いくら引っ張っても駱駝は動かなかった。

「おい、水はたっぷり飲んだだろ……!」

 本腰入れてもびくともしない駱駝と格闘すること暫し、肩で息をしながらピダムはその場に座り込んだ。

「ったく……!」

 振り返れば、遥か彼方に微かに楼閣が見える。日を見れば、東の天から徐々に中天へと昇っていく。思ったよりも時間を浪費してしまっていた。

「早く行かねぇと、トンマンと母さんが心配するだろ!」

 まさか、あれだけの傷を負った男が追い掛けてくるとも思えないが、万一と言うこともある。早く合流して二人の顔を見て、安堵したかった。
 その時、ひょう、とピダムの瞼を嫌な風が撫でた。

「――」

 その風には、覚えがあった。ついでに、何故駱駝が動かなくなったのかがわかって、ピダムは急いで駱駝の荷の中から大事なものだけを背負って、駆け出した。

『こいつらは賢い。嵐を嗅ぎ取ることもある』

 まだピダムがオアシスに来て間もない頃、アサドは客引きに行こうとするトンマンとピダムを掴まえて、砂漠の恐ろしさを語って聞かせた後、駱駝の背を撫でて告げた。

『こいつらは、確かに気紛れなところもある。だが、砂漠の主だ。逆らうなよ』

 今、駱駝が動こうとしないのは、単なる気紛れかもしれない。だが、そうでないかもしれない。……そうでないかもしれないと思うと、ピダムはいても立ってもいられずに砂を蹴った。
 ――行かなきゃ駄目だ。
 ただそれだけの想いに突き動かされて、ピダムは洞穴を目指した。邪魔にならない程度の荷を背に負って。
 けれども、間もなくピダムは我が眼を疑うような光景を見ることとなった。

(あれ……うちの駱駝じゃないか!)

 慌てて駆け寄ると、見知った匂いに駱駝の方も振り返った。が、やはり起き上がろうとはしない。ピダムも、もう起き上がらせようとはせずに慣れ親しんだ駱駝の身体を一撫でして、挨拶をした。

「追ってこいよ。お前が必要なんだから」

 しかし、残っていた荷を拾って、駱駝の返事も聞かずに歩き出すやいなや、ピダムの顔を生温い汗が滑り落ちた。嫌な汗だった。
 ――母さん、歩けたのか……?
 昨夜の様子を見る限りでは、母は到底砂漠を歩くことなど出来ないように思われた。だとすれば、この場所からあの洞穴まで、トンマンが母を抱えるようにして歩いたのだろうか。
 ――路銀を集めるより、一緒にいてやるべきだったか。
 路銀がなければ旅も儘ならないのだから、自分の判断が間違っていたとは思わない。けれど、何故だか、昨夜からあらゆることが歯痒いくらいに噛み合わなくなっているような気がしてならなかった。幸先が悪いとでも言うべきか……。

 不安が高じる中、ピダムの眼は岩窟の入り口を捉えた。自然と足が速まり、僅かに息が上がる。近いようでいて、想像するより遠い砂漠の道なき道を掻き分けたピダムは、文字通り洞窟に飛び込んだ。

「母さん、トンマン!」

 すると、洞窟の奥でぐったりとしていたソファが、ゆるゆる瞼を上げて、逆光になって顔のわからない男の影に目を凝らした。

「母さん、大丈夫か? トンマン……トンマンはどこに行ったんだ?」

 ピダムはと言うと、ソファの容態が一先ず悪化してはいないことを確認するなり、きょろきょろと狭い岩屋の中に視線を走らせた。ソファは喉が上手く動かないのか、空咳の中、小さな声を吐き出した。

「トンマンは……水を汲みに、行ったわ……」
「ああ、そっか。わかったよ、母さん。じゃあ、迎えに行ってくる」
「ピダム」

 泉の場所なら、ピダムとて知り抜いている。そのまま腰を浮かそうとすると、ソファが珍しくしっかりとした声で彼を呼び止めた。その声に、弥が上にもピダムの背を嫌な汗が伝っていく。

「何? 母さん」

 そんなことはおくびにも出さないつもりだったが、隠していても、ソファにはピダムの不安が漣のように感じられたのだろうか。

「お前は、聞かないのね……」
「……」
「……何故、逃げなければならないのか……気になるでしょう……?」
「気になるけど、聞いたからって変わらないだろ」

 ソファを安心させる為にも、ピダムは笑ってみせた。
 ――これまで、自分達の身の上についてはほとんど語らなかった母が、何やら身の上話をしようとしているらしい。
 トンマンなら耳を傾けたのかもしれなかったが、ピダムにはそれが少々不気味だった。もう十五年は隠してきたことを、何故今話そうとするのか、母の意図が読めない。
 だが、ソファは誤魔化されてはくれなかった。

「ピダム、これだけは覚えておいて……。……もし、私が死んだら……」
「母さん」
「もし、よ。もし、私が死んだら……」

 その瞬間、ピダムを見つめるソファの瞳は、燻る火を反射してきらきらと輝いていた。

「トンマンが何を言っても、鶏林には連れて行かないと、約束しておくれ」
「――」

 てっきり、妹を守れと言われるものだと思っていたピダムは、数度瞬いてから母の言ったことを繰り返した。

「鶏林には、トンマンを、連れていくな……?」
「そう。トンマンが何を言っても……お願いだから、鶏林に連れて行かないで………………二人で、生きて」

 最後の願いは、自然と唇から溢れた。

「そうしてくれるなら……母さんは安心よ」

 涙混じりの笑顔でピダムの顔を撫でながら、ソファはそっとピダムを抱き寄せた。

「――母、さん……?」
「……」

 何を言うでもなく、ソファはそろそろと埃っぽい黒髪を撫でて、最後にしっかりとピダムを抱きしめると、抱き寄せた時と同じように、静かに彼を離した。

「休んで待っているから……トンマンを、迎えに行ってあげて」
「……う……ん」

 慣れない抱擁に戸惑いを隠せないピダムは、ぎくしゃくと身体を強張らせながら、泉へと走った。
 その姿を見送ると、ソファはトンマンが投げつけたソヨプ刀に、震える指先で触れた。

『ピダム、可愛いか? お前の妻となる公主様だ』

 先見の力を持つ国仙の言葉がどこまで現になるか、ソファにはわからない。あの時も、ただただ、赤子を恐ろしい殺手から逃がしたくて、国仙から逃げた。今も、その時と想いは変わらない。
 けれど今、願いは僅かに膨らんだ。
 ――どうか、トンマンだけでなく、ピダムも生き延びて欲しい。
 そして、その分だけ、ソファの覚悟も膨らんだ。
 ――それで二人が生き延びることが出来るなら、私はどうなってもいい。だから、どうか、チルスクに見つからずにこの場所から逃げさせて欲しい……。

「陛下……どうか、二人をお守りください」

 まだ震え続ける指でソヨプ刀を握りしめて、ソファは遠く鶏林に祈った。



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  1. 2012.06.06(水) _19:45:01
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
  3.  コメント:2
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comment

緋翠さまへ

  1. 2012/06/07(木) 20:49:41 
  2. URL 
  3. あき 
  4. [ 編集 ] 
緋翠さんこんばんは♪

昨日の天体ショー、お天気は問題なかったのですが、やはり肉眼では小さ過ぎて、あの点かなー?みたいな感じで、金環日食ほどの感動には至りませんでした(>_<)私の視力が悪すぎるせいもあるのですが。ただ、日食グラスを通して見える太陽は、明々として熱を感じられて、パワーをもらえる感じで好きですv
ゆっくり見る時間も無いですし、ニュースや新聞で見た方が、大きくてキレイで良いですね(笑)

昨日は、太陽と同じくらいパワーをもらえる緋翠さんのSSも読めて、少し元気になりましたv実はちょっと体調を崩していたので…。あ、大した事はないですし、2~3日寝たら治りましたのでご心配なくv
それより、緋翠さんが疲れが出ないか心配です。ご家族の皆様は回復されましたか?

今回のお話では、ピダムがソファに抱き締められるのが、じーんとしました。ドラマでは一度も母親に抱き締めて貰えなかった訳ですし、ピダムの成長過程というか、人格形成にも影響するのかな…とか思ってしまいます。

砂漠編もいよいよ大詰めですねwドラマでは(ダイジェスト編の知識ですが(笑))トンマンとソファが生き別れてしまいますが、ピダムが絡むとどうなるのかワクワクします。
あ、リレーなので緋翠さんもワクワクしているんですねw

それでは続きを楽しみにしております!

あきさんへ

  1. 2012/06/10(日) 10:16:49 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
あきさん、お返事が遅れてすみません…!こんにちは~v(*´∇`*)v
そして、勝手に放り投げたボールをキャッチしてくださりありがとうございますーvv

> 昨日の天体ショー、お天気は問題なかったのですが、やはり肉眼では小さ過ぎて、あの点かなー?みたいな感じで、金環日食ほどの感動には至りませんでした(>_<)

確かに、テレビで見ても「小さっ」が最初の感想でした(ノ∀`)←私も視力が良くないものでw そう思うと、日食って本当に凄いと言うか、月と金星の距離の差に、改めてビックリですね…!
あ、私も日食の前に、日食グラスの確認がてら太陽を見たことがあります!真っ暗な中で太陽だけが光っていて、本当に不思議な光景でした。私もあの光景からパワーをもらえる気がしますv

> 実はちょっと体調を崩していたので…。

おわわ、今さらですが、お見舞いを…(´ω`)っ[トン&ピ抱き枕(表はトンマン、裏はピダム)]
梅雨に入るとまた寒暖差や湿度で体調を崩しやすくなりますし、あきさん、無理はなさらないでくださいね…!レモンとかオレンジとか焼肉とか食べて、元気を得てくださいv
あ、うちは、三人とも咳が治らないのですが、熱はないですし、私も無理はしてないですw なので、大丈夫ですよ~vあきさんの方が体調不良で大変だったのに、お気遣いありがとうございます…!(ノД`)・゜゜・。

> 今回のお話では、ピダムがソファに抱き締められるのが、じーんとしました。

気がついたら、ソファが抱きしめていました(ノ∀`)(笑) この連載では、ソファとピダムの間にはちょっとわだかまりと壁があったんですが、チルスクが現れて、彼から逃げなきゃいけない時に、ソファがどうするんだろう…と思ったら、やっぱりピダムにトンマンを託すんじゃないかなーと言う気持ちになりました。
このピダムはドラマのピダムとはすでにかなり違いますし、人格形成がどうなるのか、先が楽しみです!(←他人事…!?)

> 砂漠編もいよいよ大詰めですねw

そうなんですよねーw いやもう、ドキドキします(笑)
書いていると頭の中で続きも考えたりしますが、リレー小説なので、どこまで同じかなんてわかりませんし、ピダムがどうするのか、トンマンがどうなるのか、本当に私もワクワクしてますww
次に自分の番が来たら、もっと早く書けるよう、頑張りますねー!(*´∇`*)


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