善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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SS やまかぜ

昨日今日と台風が凄まじかったですね…!昨日は管理人もずぶ濡れになりまして、服を絞ると言う珍しい体験が出来ました。←

そして、やっとヒストリアのウメちゃん回(違)を見れましたvv いやーウメちゃんったら声と薙刀捌きが素敵~(*´∇`*)さすが殺陣上手!(ウメちゃんは元トップ娘役さんだぞ…) それにしても、無双の映像が流れるとか、えぬえっちけーどしたwと思ってしまいました。もう何年もやっていませんが、無双のギン千代は確かに美人で強くて、「雷切!」はすんごく好きな技ではありますが(笑)

続きは、台風シーズンにと書いたSSです。


* *


 皐月も半ばを過ぎたその夜、徐羅伐の空には不穏な黒雲がかかっていた。

「司量部令、日官が言うには、今夜は酷い風に加えて、大雨になるそうです」

 サンタクの言葉通り、徐々に激しくなる風の中、ピダムは足早に仁康殿を目指していた。その頬に、ぱらぱらと雨粒が弾けていく。

「司量部員を都の隅々にまで配置しろ。火事に紛れて何かことが起こる可能性もある」

 けれども、振り返らずに先を進む彼には、雨粒程度は何程でもないらしい。とは言え、命令を実行する為にサンタク以下の司量部員も去り、ピダム一人で仁康殿に辿り着いた頃には、絹仕立ての礼服はたっぷり水を吸い込んで、重たげに肌にまとわりついていた。
 その仁康殿はと言えば、数多の宮女達があたふたと嵐に備えて立ち働いており、いつも取り次ぎをする宮女だけが、辛うじてピダムの姿を認めて駆け寄ってきた。

「陛下にお目通りを願いたい」

 が、通されたのはいつもの執務室ではなく控えの間だった。

「こちらでお待ちください。それから、こちらを……」
「?」

 渡されたのは随分と大きな布で、そこで漸くピダムは自分がずぶ濡れになっていることに気付いた。僅かな時間、外を歩いただけなのに、この有り様とは。
 まだ司量部令に就任して数ヶ月とは言っても、さすがにこんななりで目通りを願うのは不味いと言うことは、ピダムもわかる。仕方ないとわしわし髪や礼服を拭いていると、いつの間にやら消えた宮女の代わりに、しっかり鎧を着込んだアルチョンが現れた。明らかに臨戦体勢だ。

「ちょうどいいところへ来たな。私は今から仁康殿の周りを見回ってくるから、陛下のご身辺を頼む」
「ああ。任せてくれ」

 「侍衛府令の許しを得た」と言うわけで、きびきびと立ち去ったアルチョンに続いて廊に出たピダムは、宮女の案内なしに執務室に入った。

「陛下。陛下、ピダムです……」

 声が尻窄みになったのは、てっきりそこにいると思っていたトンマンがいないからだ。宮女もいないので、おや、と寝所の方を見れば、まだ寝るには早い刻限なのに、戸が閉ざされているではないか。
 そこで、普通なら「お休みになったのか」と引き下がるべき臣下たるピダムは、らしからぬ行動に不審を覚えて戸に近寄った。まだ寝所への出入りは許しがなければならない身だが、危急のことならば許されるだろう。

「陛下? もう御寝遊ばしたのですか……?」

 恐る恐る戸を開ける。私には、日官からの報告を受けて司量部員を散らせたことを知らせる義務があるのだから、と自分に言い訳をして。



 時は遡って、その日の夕刻のこと。まだ即位間もないトンマンは、彼女の治世において初めての天災の予兆に緊張していた。これまでは、何かあっても父と璽主がいたが、これからはもうトンマンが一人で考え、責任を負わなければならないのだ。

「永興寺の太后の元へ花郎を遣わし、ご身辺をよくよくお守り申し上げるように命じよ。皇龍寺の伽藍や瞻星台などにも花郎を配し、家屋が倒壊した民は諸寺に避難させなさい」
「はっ」

 早速当代の風月主を呼び出して命令を下してからも、何やら落ち着かないのは、やはり大風に伴いやって来るだろう大雨に、トンマン自身がなかなか馴染めずにいるからだろうか。仁康殿の外の様子は、アルチョンが細々と知らせてくれはするものの、日が暮れるにつれて微かに気が昂って、夕餉の味がよくわからないと言う有り様だ。
 そうこうするうちに日も落ちて、女官長は寝所を整え、宮女達が灯りを増やし始めた。装束を扱う宮女と、髪を整える宮女が現れて、女官長がトンマンに一礼した。

「陛下、お召し替えのお時間でございます」
「ええ……」

 上書から白面を上げて相槌を打つと、トンマンはゆっくり立ち上がって、寝所に隣接する室に入った。
 大きな鏡と化粧台、さらには装束をかけておく衣架と大きな槽に取り囲まれたその室では、トンマンは着せ替え人形さながらに宮女達に我が身を預けるのだ。まずは礼装を飾る金の飾りを全て取り、真紅の装束を脱がされ、白絹の内衣一つで化粧台に座らされる。次に、細い頚を痛めつける金冠と鬘が外され、豊かな髪に幾度も櫛が通された。それから、薄い浴衣に着替えて、たっぷりと湯の張られた槽で花弁に巻かれながら初夏の汗を流す。――ちなみに、本来ならもっと大きな湯殿があるのだが、そちらは入るのにも支度にも時間がかかるので、政務が繁雑な日には使われなかった。
 さて、宮女達がせっせと我らが陛下の玉の肌を磨く中、玉の肌にせんと宮女達にごしごし洗われているトンマンは、その夜の予定を思い浮かべていた。

(今夜は寝衣を着ない方がいいな。何かあればすぐに出られるようにしなければ)

 古い記録を見れば、大風で殿舎が倒壊したり、火事が起こることはよくあるのだとすぐにわかる。ピダムには、司量部令になってすぐに、災害時に司量部が取るべき行動は言い聞かせたから、然程案じてはいないけれど、万が一にも王宮たる月城に火の手が上がったら、対処が必要となる。まだ即位間もないのだから、用心に用心を重ねてもおかしくはない。
 ……と言うわけで、湯から上がったトンマンは、鬘も付けずに髪を一つに結い、いつでも騎馬の手綱を取れるよう、雄々しい出で立ちに扮した。

 寝所に入ったピダムが見たのは、そのように凛々しい姿で上書を読むトンマンだったのだ。

「……陛、下……?」
「ああ、来たのか。どうだ、司量部員は配したか?」
「は……はい」
「? 何を不思議そうな顔をしているのだ」

 そこでピダムの表情が鬼でも見たかのように困惑しているのに気がついたトンマンは、僅かに眉を顰めて沈思した後、「ああ」と眉尻を下げた。

「ピダム、お前、びしょ濡れじゃないか。そんな格好では、風邪をひくぞ。替えの衣を用意させるから、着替えてこい。こんな日だから、礼装でなくともとやかく言われることはないだろう」
「……はい」

 その、至って平静とした様子のトンマンを見て、ピダムは初めて己の中にある小さな失望に気がついた。

(……これじゃ、陛下はまるっきり私の助けなんて必要としていなかったかもしれないな)

 ピダムが来てからも、被害状況が報告される度に、トンマンは落ち着いた様子で頷き、忙殺されそうな部署には余った人員を配した。宿直の者や、自ら志願して王宮に参じた者も適宜ピダムに裁かせ、身辺の警護にも余念はない。新王として見事に大風と言う災害を乗り越えてみせたトンマンは、また一回り大きく、頼もしくなったようにピダムには見えた――。


***


「……そう、思ってたんだけど」

 初々しく、凛々しく大風を乗りきってから、はや十数年。あの夜と同じような大風に見舞われているその夜、ピダムは囁き声で微かに笑っていた。

「本当は見栄を張ってただけだったんだな」
「……煩いぞ、ピダム」
「雨音の方がずっと煩いよ」

 にやにやと口の端を上げて応じると、ピダムは彼の懐にしっかり収まっている身体をあやすように撫でた。

「ヒョンジョンなんか、ちっとも起きないじゃないか」
「……まだ小さいから、夜になると起きていられないんだ」
「ついこの前までは、夜泣きがどうのと言ってたのに?」

 しかし、いくらトンマンが機嫌を損ねようと、ピダムはしつこくトンマンをからかった。まだ幼いヒョンジョンがきゃいきゃい嵐を楽しんでから眠ったのに対して、まるで子供のように嵐を恐れるトンマンが可愛くてならない。そう簡単にこの愉しみを捨てられるものか、とでも言わんばかりに、彼を壁の方へ押しやった挙げ句、頑なにそちらを見ようとしないトンマンの耳朶に、ピダムは悪戯を繰り返した。

「私を怒らせたくなかったら、口を閉ざして、しっかり一晩起きていろ。もしうちが壊れたら、どうする」
「建て直すよ」
「……」

 本当にトンマンが言いたいのは、「壊れたらと思うと、怖い」――と言うことなのだが、ピダムは素知らぬふりで、手を伸ばした。二人の身体にかかっている衣を力一杯掴む手は、微かに震えているらしい。包み込むようにその拳を握ると、震えが小さくなった。

「……嵐なんか、大嫌いだ」

 ややあって、ぽつりとそう漏らしたトンマンが、いったい何を思い出しているのか知っているピダムは、つとからかうのを止めて、蒼白な頬に唇を寄せた。

「もし酷い嵐が来ても、ちゃんとトンマンを掴んで離さないよ」
「……私は、ヒョンジョンを掴んで離さないぞ」
「ん」

 例え、トンマンが育ての母と生き別れた時のような嵐が来ても、大丈夫だと言うように、ピダムはトンマンを、トンマンはヒョンジョンの手を握った。

「まんま……」

 それに応えるように、まだ片言でしか喋れないヒョンジョンが、寝言を口にしている。むにゃむにゃ言いながら寝返りを打って母に身を寄せた息子を、トンマンはぎゅうぎゅう抱きしめた。やがて、見かねたピダムが自分もとトンマンをぎゅうぎゅう抱きしめているうちに、夜も更け、山から吹き下ろす風も収まり始めて。

「……トンマン?」
「……」

 朝ぼらけには、隙間から射し込む朝日の下、嵐を怖がる可愛い妻は、今日も一日逞しく働くべく熟睡する、逞しい母へと変貌していたのだった。





******

仁康殿の構造は不明なのに、勝手にあれこれ部屋を作ってしまいました(ノ∀`)
台風お見舞いにもならないお話ですが、お楽しみ頂ければ何よりですv
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  1. 2012.06.20(水) _23:00:00
  2. 連載外伝~幸せ家族計画~
  3.  コメント:2
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comment

緋翠さんへ

  1. 2012/06/21(木) 20:02:01 
  2. URL 
  3. あき 
  4. [ 編集 ] 
緋翠さんこんばんは♪
早くも台風上陸で、大変な一日でしたね!風邪は大丈夫でしたか?雨に濡れてひどくなっていませんか?
こちらも雨続きで家事がはかどりません。←晴れても一緒ですがw

そんな中、進まない家事はほったらかして(笑)強制トン&ピタイムをコーヒーと共に満喫中です。

『やまかぜ』は、初々しくも凛々しい女王編かと思いきや、ピダムの回想編だったんですねーw
ピダムが夢見た「きゃーピダムっ」と震えながら自分にしがみついてくれる女王の姿は、十数年の時を経て、漸く実現したんですね♪
たっぷり熟睡した後に、窓に吹き込んだ雨風の後始末やら、建て付けが悪かった場所のチェックやらテキパキとピダムに指示して、たまった洗濯に勤しむトンマンの姿が浮かびますv(子供が産まれる前ならピダムが先んじてやりそうですが)

そして、今回の萌スポット(笑)は『湯殿』です!王様専用?のスパワールド湯殿は、蛇口もホースもない古代には、お湯張りだけでも重労働&無駄だらけで、トンマンはめったに使わなそうですvだだっ広い湯殿で自分だけ素っ裸で(薄布付き?)アチコチから手が出てきてされるがままって、宮中に入ってからのトンマンにはさぞかし苦痛だったでしょうねー。
小さい湯殿←それでも六畳位はあるのでしょうか?は立ち入る宮女も少数で、少しは落ち着いたのかな…と想像が膨らみますv

楽しいお話をありがとうございましたvvv

あきさんへ

  1. 2012/06/23(土) 14:02:58 
  2. URL 
  3. 緋翠@管理人 
  4. [ 編集 ] 
あきさん、こんにちは~vv
今週は本当に各地で大雨が大変なことになってますよね(;゜Д゜) あ、私の場合は雨に濡れるのは平気なんですよ!発熱するタイプではないですし、咳は気温の方が影響があるので、「こんなにびしょ濡れになるのは部活の試合中に降られて以来だなあ(´∀`)アハハハ」程度の暢気な感じですw せっかくご心配頂いたのに、こんなやつですみません(ノ∀`)
あ、でも、心配して頂けるのはいつでも嬉しいです!ありがとうございます~v(*´▽`*)v←コラw

> こちらも雨続きで家事がはかどりません。←晴れても一緒ですがw

雨続きだと、洗濯も掃除もしづらいし、ゴミも出すのが大変ですもんね!お買い物も(以下略) ←私も晴れてても同じですw

> 『やまかぜ』は、初々しくも凛々しい女王編かと思いきや、ピダムの回想編だったんですねーw

実はそうでしたv 最初に「隠居連載です」と書いてしまうと、おびっくり感がなくなっちゃうわと思いまして、引っ掛け問題のようになりましたw
ピダム的には、「きゃー」としがみついてもらえなくても、トンマンの手が震えていたりして、それをぎゅっと握ってお慰めしちゃうぞーぐらいの期待はあったのかもしれません。(←なんとなく、ピダムの場合は、しがみつかれるより「お触りしたいv」が優先されるようなイメージが(え…))

> たっぷり熟睡した後に、窓に吹き込んだ雨風の後始末やら、建て付けが悪かった場所のチェックやらテキパキとピダムに指示して、たまった洗濯に勤しむトンマンの姿が浮かびますv(子供が産まれる前ならピダムが先んじてやりそうですが)

あー確かに…!おかーちゃんなトンマンだと、息子はピダムに任せて、あれこれ片付け始めそうですねー。そして、あきさんの具体的なこのコメントを読んで、あきさんのいいお母さんっぷりをこっそり拝見させて頂いた感じがします!(・∀・)頼もしいですvv←お前のおかあさんじゃないぞw

> そして、今回の萌スポット(笑)は『湯殿』です!

ありがとうございます(爆) 昨日のペケポンのMAX敬語でも「お風呂」のMAX敬語は「御湯殿」と出ていたので、やっぱり女王陛下と言えば湯殿…とあれこれ妄想がww
そうですよね、御湯張りがかなり重労働ですよね…!テルマエ・ロマエの映画で見た、壁の向こうで頑張る奴隷さん達が浮かびました(ちょ) 日本だと、御湯とかは下級女官が用意していたようなので、きっと向こうにも水汲み女とかがいて、そう言う方達のこともトンマンは知ってそうです。
あ、一応素っ裸ではなく、浴衣を着てる説を採用しましたw そっちの方が私が萌え(以下略)

> 小さい湯殿←それでも六畳位はあるのでしょうか?は立ち入る宮女も少数で、少しは落ち着いたのかな…と想像が膨らみますv

小さい湯殿は、お着替えとかお化粧をする部屋の中に浴槽(直径1メートルくらいありそうなもの)を持ち込むイメージでしたが、どうなんでしょう……小部屋にした方が良かったのか、今、真剣に悩んでいます。と言うか、創作上困らないように、一度仁康殿の見取り図とか書いた方がいいんじゃないかと言うかしてきました(爆)


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