善徳女王の感想と二次創作を中心に活動中。

RhododendRon別荘

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リレー連載『偽りが変化(か)わるとき ~砂漠編』  by saki

暑い連休ですが、皆様いかがお過ごしでしょうかー?(・∀・)

私はと言うと、ついさっきまで『王女の男』の二話を真興大帝目当てで見てました(爆)
感想は……とりあえず、主役のにーちゃんの誤解(王女様が入れ替わってると知らないが為のニヤニヤ感)が…うわ…カワイソー(笑)と…。←笑ってやるなw 脇役陣は、真興大帝やヨムジョンをはじめとしてどっかで見たような俳優さんがワラワラいました。んでもって、警察官?の兄ちゃんがイケメンやなーと。あとは、カメラが高性能過ぎて、見てて目が疲れました(笑)

続きは、リレー連載の46話です。sakiさん担当です~v


* *


踏み込みが浅い。砂に足をとられる事を危惧し思い切れないせいだ。ピダムは目の前の男から視線を反らさずに舌打つ。それに習練用の刃を潰したような剣では時間稼ぎもろくに出来るかどうか。なんていうのは言われなくても百も承知。力量を十分に知っている商団護衛の男達とチルスクが何度か手合わせしていたのをピダムは知っていたし、何より街一番の腕とも言われていたあのアサドに膝を着かせている。まかり間違っても自分が勝てるような相手ではないだろう。



(けど、それが何だっていうんだ!今はとにかく時間を稼げ!トンマンが母さんを引っ張り上げるまで!)



けれど互いに引かぬ鍔ぜり合いを繰り返したピダムはチルスクの振るう剣が考えていたよりも力弱く鈍っているのに気付いた。何故と思うまでもない。理由は昨夜ピダムも目にし今もその影響が乾いた砂に染み込んでいっているのだから。紅い滴がチルスクの腹部を染めている。止血はしているのだろうが動く毎にその色は濃く増していく。



(・・・これなら!)



そう希望を見出だした事を嘲笑うかのようにチルスクの剣がピダムの頬を掠めた。



「お前は誰だ。赤子に兄はいない。お前がなぜ此処にいる!」

「訳分からん事言うな、おっさん!まさか勘違いで人ん家の宿燃やしたあげく、母さん達を襲ったとか吐かすなよ!?」

「・・・勘違い?勘違いだと!真実、そうならばとどれ程考えたか!?」



轟と吠え振るわれるチルスクの剣に力が増した。真横に振るわれたそれをピダムは剣を立て受け流そうとしたが力負けし手から剣が弾き飛ばされる。取りに走るような隙も時間も無い。そう判断したピダムが懐から短刀を取り出すのとチルスクが何かに気づき焦りの表情を浮かべたのは同時だった。短刀が脇腹を突くのも構わず距離を詰めるとそのままピダムを突き飛ばす。勢いを殺す事が出来ず数歩ピダムは後ろに転がった。しかし直ぐさま起き上がると舌を打つ。トンマンの邪魔をさせるわけにはいかない。直ぐにチルスクの背を追おうと振り返り、しかしピダムもまたそれを認めて絶叫した。



「トンマン!下がれ!!」



ソファを助ける事に必死で、その足元にまで注意がいっていない妹。ぱらり、からりとその足場が無くなっていく。砂が減っていく。あのままではトンマンまでもが落ちてしまう!引き戻そうとピダムが駆けようが間に合う距離ではなかった。それ以前に妹との間にはチルスクがいる。流砂に落ちるか。チルスクの剣に害されるか。見える未来はそれだけでピダムの脳裏に絶望の2文字が過ぎった。けれどトンマンの足元が崩れる瞬間、その身を引いたのはチルスクにほかならく。チルスクの腕の中、逃れようともがく妹か既に僅かの猶予もなく砂に呑まれていく母親か。逡巡するピダムの耳に悲痛なトンマンの叫びが突き刺さった。



「母さん!母さん!何で!?どうしてっ!?」



次いでトンマンの手にある端が切れ本来よりも短くなった縄にピダムは体から血の気が引く音を確かに聞いた。瞬間、ピダムは流砂に向かい駆け出していた。



+++



この縄を切れば助からない事など解りきっている。けれど、娘の足元までもが崩れ始め、息子があの男に勝てる道理もなくソファは自身が2人の足手まといになっている事実から目を反らすわけにはいかなかった。フツリ。と手の中の縄から力が抜けるのと、娘の足元が崩れるのと、そしてその平衡を失った体を男が引き戻したのは殆ど同時だった。
暴れる少女を押さえ込みさらに崩れる流砂の淵から離れる男が一瞬こちらに視線を向けた。その目に何か言いようのない色が走るがソファがその事に気付くことはない。それよりも息子をどうしたのかと現れた男に食ってかかりたかった。



「母さん!」

「ピダムっ!良かった。怪我は・・・・怪我はしてない?」

「何で縄を切ったんだよ!?」



既に体の半分以上が砂に埋もれたソファを見てピダムは自分一人の力では引き上げられないと悟る。トンマンと2人がかりでもどうなるか判らない。焦るピダムにしかしソファは静かに笑うだけだった。



「・・・ピダム。トンマンを・・・・・・妹を、守ってね。」

「っ!?待ってろ!絶対、待ってろ!今すぐおっさん打っ倒してトンマンと2人で引っ張り上げるかんな!!」



泣き顔と変わらない表情で叫ぶピダム。ソファはそれは叶わない事だと、己の事よりトンマンを連れて早く逃げてほしいのだとピダムの背に訴える。



「トンマンと母さん!2人がいなきゃ意味ねぇんだ!」



砂の淵から声だけ残し消えた息子は言葉の通りチルスクに向かっていったのだろう。剣戟の音と自分を呼ぶトンマンの声にソファはもはや祈る事しか出来ない。



(天地の神よ。あの子たちを、どうか・・・・。)



その間も砂は容赦なくソファを地中に引きずり込む手を緩める事はない。







それは天の意思か悪魔の采配、どちらだったのか。追う男とそれから必死に逃れようともがく親子の遥か上空でゆっくりとしかし着実に異変は進んでいた。この時期には珍しい冷たい風がヒュルリヒュルリと砂の地に向かって吹き荒れる。始めは砂の上を転がる小さなつむじ風に過ぎなかったそれが時を経ずして砂塵を巻き込み、更には他の風をも巻き込み砂漠の民さえも恐れるほどの砂塵嵐に成長する。

そして異変に気付いたのはチルスクの方が先だった。遠く地響きのような音をその耳が拾い理屈を伴わない焦燥が全身を駆け巡る。それはこれまでに培ってきたある種の経験がそうさせたのかもしれない。けれどそれはこの時においては一瞬の隙にも繋がることだった。暴れるトンマンを抑えながらピダムの剣を受けていたチルスクだったが僅かにバランスを崩したのだ。そしてその針の穴ほどの好機でさえも見逃す兄妹ではなかった。いやまして暴れるトンマンにとうとうチルスクのその手が緩み、ピダムの渾身の剣に一瞬だが片手だけでは対応仕切れなくなる。結果、チルスクの手からトンマンが転がり落ちた。再び捕まる前にと縄を手に引っつかみ一目散に駆けるトンマン。どうかまだ間に合って!と。一方、油断なくチルスクに剣を向けていたピダムは漸く男が見せた隙の正体を知る。こちらに向かって進む黒い風の柱・・・否、壁を目にして。天に届いて余りある砂の壁を認めたときには知らずピダムは息を呑んでいた。



「っ砂嵐!?」



それも今までにピダムが聞き知ったものとは明らかに桁が違う。本能的にヤバいと感じたピダムはチルスクに斬られるという可能性も忘れ、男に背を向ける母と妹の側へと駆け戻る。



「母さん!トンマン!!」



何の準備もなくあんなものに巻き込まれたらどうなるか分からなかった。



+++



視界が砂に埋もれていく中、ソファは空を覆う砂の壁を見た。



(あぁ。天はあの子達に味方してくれた。砂嵐が2人を隠してくれる。あの女から逃がしてくれる。)



その時のソファにとって砂嵐は天の助けに他ならなかった。砂漠の民が恐れる砂嵐よりもチルスクや遠く鶏林にいるあの女の方がソファには恐ろしいものだった。



(トンマン。ピダム。逃げて。生きてね。)



必死に手を伸ばす娘にソファは微笑んで・・・・・・・砂に、消えた。



「母さん!母さんっ!いやぁーーーーー!!」



蒼窮にトンマンの叫びが虚しく響き、そして、砂嵐が全てを飲み込んでいく。



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  1. 2012.07.15(日) _22:27:24
  2. リレー小説『偽りが変化(か)わるとき』
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